メアリー・K・グリーア著/鏡リュウジ監訳「タロットワークブック あなたの運命を変える12の方法」7月の発売以来各方面からご好評いただけているようで、訳者の一人として大変にありがたく喜ばしい次第である。ありがとうございます。
(こちらもご参考あれ:過去ログ「「タロットワークブック あなたの運命を変える12の方法」メアリーKグリーア著/鏡リュウジ監訳/現代タロット研究会訳」)
さてそんな本書のオモシロどころはなんといっても「タロットプロフィール」の作成だろう。数秘術的・占星術的照応から、自身の生年月日に応じた様々なキーカードを割り出していく訳だが、これははじめてタロットを手にとった人でもすんなり深く楽しめる、とてもキャッチーな技法である。
また、こうして得られたタロットプロフィールからは、続く「イヤーカードグラフ」の作成でさらなる妙味が引き出される。手順は極めて簡単なのだが、ずらずらっと並ぶナンバーチャートと空欄グラフ用紙にやや尻込みする、という声がちらほらあったので、以下に実際にやってみて手順を紹介する。カンタン楽しく深みのあるエクセサイズであることがお判りいただければ幸いだ。
■■■パーソナリティカードとソウルカード
おれは1973年3月26日生まれ。足すと2002で、一桁になるまで足すと4となる。
すなわちおれのパーソナリティカードは4、「皇帝」である。
4桁からいきなり一桁になったので、ソウルカードも同じく4、「皇帝」となる。
ちなみに3/26は牡羊座、「皇帝」のカードの占星術上の対応も牡羊座である。(『ツァダイは星にあらず』はとりあえず無視ね)すっげー皇帝。濃い皇帝。
短気で飽きっぽい理想家。暫定的で圧倒的な支配権をふるい、仕事が片付く前に飽きる。ええもうそのとおりでございます。本書附録Aの「カードの解釈」で「皇帝」を引くと、【アファメーション】の項に
「私は最も高い望みを達成する力と克己心を持っています」
とある。いやーそうだといいよねほんと。けどおいらもうくたびれちゃったよ。
■■■ヒドゥン・ファクター・カード
とまーこんな序盤でくたびれててもアレなので、サクサクとP26の表からパーソナリティ/ソウルカードともに4となる欄を引き、ヒドゥンファクターカード(隠れた要素、影のカード)を得る。どれどれえーと13「死」と22「愚者」ね。
ここまでの3枚が、自分の意識的・無意識的な人格を統合して表す「タロットの星座」となる。しばし瞑想。むーん
■イヤーカード
さて、イヤーカードいきますよ。まずは今年2012年のイヤーカードを算出してみる。
7「戦車」ね。一見派手そうだが質実剛健、慎重に一歩一歩進む感じね。まーそうかもね。
今年は家に籠ってることが多かったし、仕事上では新分野開拓に明け暮れた。また家族が入院したりしたこともあり、人生史上初の勢いで「家族」と関わった1年だ。これはなるほど「戦車」のイメージにしっくりくる。
■■■その他のカードを算出し、タロットプロフィール完成!
ほいほいほい、と書き込んでいって、タロットプロフィールが完成!
ちなみにタロットをメモに記す時には、例えば「ワンドの2」なら「2/W」、「ペンタクルのクイーン」なら「Q/P」とか略記するのが便利。自分にわかればいいわけで。
■■■イヤーカードグラフ
さてびよーんと間をすっとばして「イヤーカードグラフ」をつくってみる。
P61の表から、先ほど生年月日から算出した「1973年3月26日=2002」のカード4をみつけ、そこから一連の連なりを次ページの空白チャートに点を打っていく訳だが、最初に「年齢/0才」のところに生まれた年73と書き込み、そこからずらずらずらーと西暦を埋めておこう。おれはなんとなく75才以上まで生きる気がしないので、切りのいいところで西暦2050年まで埋めてみた。
で、0才の時には「4」、そこから表に従って毎年のイヤーカードの印を打っていき、分かり易いように直線で結んだ上で、ぐわーと過去を思い出していろんな人生上のタイミングを書き込んでみる。特に思い出すトピックがなくても、直線の始点と終点の年を思い返してみると「なるほどねー」という出来事がスポスポ当て嵌まっていくのではないだろうか。
■73年「皇帝」で誕生したおれは、80年「欲望」で終る最初の10年周期の節目に、大阪から名古屋に転居。
■再び「欲望」が現れる89年から次の10年周期開始にあたっては、ドロップアウトした高校を通信制に切り替え、老人病院リハビリ室に就職。これが人生初の職業だ。生命力を持て余し生き急いでいたこの頃の雰囲気はなるほど「欲望」ですかそうですか。
■さらに次の10年周期の開始の年01年(カード:司祭)には人生初の海外旅行で中央アフリカ・ザンビアへ。中古ベンツでの中央アフリカ放浪、日蝕&トランスパーティの洗礼を受けた。街での試みに一区切りをつけ、太陽と月が重なる一点を目指して地球の表面をぐるっと移動してみたこの経験は、現在のスピリチュアリティ探求(司祭)の方向性を決定づけたものだ。
■次の10年周期開始、つまり2011年(カード:恋人)は広告代理店を退職。震災をきっかけに「散都」のイメージに導かれて岡山移住を決めたのだが、前回93年に「恋人」が現れた時も、このまま病院で看護士を目指すか、全く別の人生を模索するか、二つに一つの決断を迫られたタイミングであった。「恋人」とはまさにそのような決断、二者択一を象徴するカード。
やるじゃんメアリー。総じて、グラフに現れた10年周期の終了/開始は「移動/旅」で彩られている。他にも要所要所でのイベントが、同じカードの年に共鳴するように起きていたりして、感慨深い。
■最初の自分の会社を設立した年と、二つ目の会社を設立した年は、ともに「隠者」のカードの年。
■現在の妻と同棲を開始した年と、正式に結婚した年はともに「死」のカードの年。「死」はおれのヒドゥンファクターカードでもある。
■はじめて「業(ART)」が現れる10年は、初の広告賞受賞作品を制作していた最中。(受賞は翌年度)
へー面白いねーいやーなんなんだろうね人生て。いやはや。とまー一通りグラフを作ってみるとこんな感じに過去の人生史に象徴的なレイヤーを透かしてみる面白さを味わえるのだが、このグラフのオモシロは過去方向だけで味わうものでは勿論ない。
■■■未来はどうなるの?
グラフは未来方向に、自分の気の済む先までタロットを当てはめていくことができる。過去の出来事とそこに現れているカードを手掛かりに、今後の人生にどのようなタイミングがあり得るのかを予測できる訳ですね。予測ていうか、なんか今後の行動に「あ、次にあのカードが出るの○○年か」という風に、行動のガイドリズムにする、てイメージかな。
例えばおれの場合、どうも「死」が現れる年が重要な節目となっているようなので、今後「死」が現れる年を貫く横線を引いてみた。すると18年、27年、36年、45年が「死」の年になることが一目瞭然となる。最後の「死」の年に死ねば享年72才、タロット72枚の旅が切りよく終る訳だが(※1)、先述のとおり、なんとなく75才くらいじゃね?と思っているのでその年、48年をみるとカードは「塔」。うん、これも確かに死にそうだ。
しかし、ここまでの人生でまだ登場していない、つまり体験していないカードが幾つかある。77才まで生きれば、この人生ではじめて「月」のカードが現れるのだ。せっかくだから「月」も体験してみたいので、おれは自分の寿命イメージを2年延長し、「月」がもたらす「魂の暗い夜」「黄泉の旅路」の体験をもって人生の晩年を飾ろうではないか、と心がけるようにした。
■■■イヤーカードグラフの意義
こうして人生の過去と未来にタロットの象徴性をマッピングしていくことは、単に占い的な楽しみにとどまらない意義を持っている。タロット1枚1枚の象徴性は、究極のところ個別のカードとの1対1の瞑想によって関係性(ラポール)を築いていく他ないのだが、イヤーカードグラフを作ってみることで、実際の人生での体験とカードが結びつき、瞑想の「お題かつ解答」として、ぽんと目の前に提示される訳だ。それは、自分にとって「皇帝」が、「司祭」が、「恋人」が「死」が、どのような意義を持っているのか、どんなメッセージを含んでいるのかを、自身の人生をガイドブックとして探求することに等しい。イヤーカードグラフをつくり、人生のイベントを書き込み、初恋の甘美や別離の痛みを再体験しながらカードのメッセージを読み取ろうとするプロセスは、そのまま非常に強力なタロット瞑想であると言えるだろう。
グリーア女史のタロット文化への貢献の最たるもののひとつが、このメソッドであるとおれは思う。78枚全部、瞑想してパスワークして、マスターしていきたいですよそりゃ。けどさー1日1枚とか、1枚1週間とか、そういうカリキュラムを自分に課してやるのって大変じゃん。やってらんないって。忙しいし。そこで「ほら、あんたの人生に大アルカナをマッピングしてみれ。あんたの体験とカードの関係、興味あるっしょ?」という導入は、教育法として極めてエレガントで強力だ。一枚一枚のカードを、自分ごととして、体験として、知らずのうちに内化していく。この大アルカナマスター法を思いついた時の、希代のタロット教師グリーア女史のにんまり笑顔は想像に難くない。
グリーア女史は、伝統やオカルティックな秘密教義よりも、まずリーダー(読者)自身のひらめきと、その人生のシンクロニシティを信頼し、委ねる。タロットについて、難しいことなんか何も知らなくていい、ただ人とカードが出会えば、そこには意味のある語らいが必然的に生まれるのだ、そのピュアな出会いこそが重要なのだ、という信念が本書を通底しているように思える。
興味を持たれた方は是非、ご自身のイヤーカードグラフをつくって見て欲しい。そこで得られた何らかの発見や、新たに生まれた謎など、ツイッターなどでシェアしていただければこれまた幸いの極みである。本書の他のエクセサイズについても、ご質問やご要望などがあればこのブログで実技解説の機会を持つ所存である。
※1
(9/4付記)「タロット78枚の旅」の誤記である。タロット72枚の旅?何書いてんだおれ、と思ったらソロモン72柱の悪魔ですねそれ。GD体系ではホロスコープの10度区分(decan)にエースを除く小アルカナ2-10の36枚を対応させ、そこに2柱ずつ悪魔を配置している。つまりタロット72枚の旅とは1年間昼と夜のGoetic Travelとなる訳だ。やだなーw
「タロット78枚の旅」の完遂を目指すならおれの寿命イメージも当然78才まで延長するべきだろう。翌年をみるとなんと!新たな10年周期の開始にあたり「運命の輪」が! というわけでボーナス10年を追加し、おれの寿命イメージは10年周期の最後87才まで延長されたのであった。そこには「太陽」が。うん、死にそうだ。