すこぶる調子はいい。
要は経絡、情報神経系のターミナルに刺激を加えてシステム全体の再調整、時にハッキングを行うもの、というのがおれの現時点での鍼の理解だ。おれは鍼を打たれている時に、フィジカルな身体とはまた別レイヤーの、脳内に結像する神経映像としての身体を強く感じる。
西洋医学が発見してきた「神の機械」としての身体と、東洋医学が追求してきた「映像としての身体」に、微妙なズレがあるのは何故だろうか。おれの仮説は、チャクラ、経絡といった「映像としての身体」とは、原初のバクテリアから現在の霊長類まで連なる永い時間のなかでかつて体験した様々な身体の「残像」なのではないか、というものだ。
昆虫、は虫類、無脊椎動物、もしかしたら植物や鉱物までぼんやりと内包する「身体の残像」の担い手は、もちろんDNAだ。そして我々のタンパク質/炭素ハードウェアを「利己的な遺伝子」のヴィークル、その戦略的な一過性の表象として捉えれば、身体の「残像」は、過去の記憶のみならず未来の予感をも内包する、といえるだろう。
背骨の基底部に竜の生命力を格納し、膨張する脳神経系によって霊界=情報空間を拡大する人間の身体は、両生類のまどろみと天使の官能の間で振動する。そこには過去と未来のゆくたてが織り成す無数のひだ、紋、レイラインが緻密に刻まれていることだろう。経絡、チャクラ、スシュムナーといった様々な身体映像システムは、タンパク質/カーボンハードウェアとDNAの情報戦略地図に刻まれた情報単位(bit)を解読・更新するサイバネティックスとして位置づけられるのではないか。
ここまで書いたところで、妻がおもむろに服を脱ぎ落とし、恍惚とした表情で歩み寄ってきた。おれはしっぽりと濡れそぼる秘密のチャクラに向かって、マントラを吹き入れる。母音と子音の絶え間ない律動が、光の粒の大いなる流れとなって、彼女のガンジス、ナイルを氾濫させる。再び昇る、シリウス。
古代の東西の神秘家たちは、ヨガ的、シャーマン的、魔術的な心身の行により、身体と霊性のサイバネティクスを拡張しながら、個体の身体を超え出た地平に「未来の身体」を幻視した。それは時に神やデーモン、天使、大いなるもの、アダム・カドモンとして時空の外殻へ投影され、それへの回帰、または合一の熱望へとタンパク質/カーボンハードウェアを駆り立てるDNAの進化戦略的映像だ。その映像は芸術と神学、宗教を生み出し、人類の群生形態を社会組織化してきた一方、ヨガやMAGICK、そしてSCIENCEといったテクネーの拡張を推し進め、ついに近現代の心理学、脳神経学、量子物理学、電子メディアの到達による位相転移をもたらそうとしている。
行がもたらす身体変容による霊界への参入、拡張という「上昇」のベクトルから、知覚そのもの、映像そのもののデザインから身体生理・政治を変容・拡張せしめる「下降」のベクトルへの、霊性のポリティクスの反転。かつてみたものの全て、かつてみなかったものの全てを神経系に直接点描する電子メディアテクノロジーによって、生命にとって、DNAにとっての「経験」、そしてその触媒としての「時間」が意味するもの、担うものが、劇的に再解釈、再編成される。タイムマシン、アセンション、スパイラルゼロ点、なんと呼ぼうとそのオメガポイントは目前に予感され、芳醇な香薫を漂わせているが、その到達はまた石油燃料枯渇や環境汚染といった物理的エントロピー飽和速度とのチキンレースにかかってもいる。
なんてことを考えながら、治療院のベッド上で身体中に打ち込まれる鍼が描き出す自身の身体映像にアストラルトリップしていると、なるほど経絡というのは身体に浮かび上がる星座のようにも感得される。特に、お気に入りの火鍼(針先を火で焼いてチクジュ!とやるやつ)は、ハイファイに色鮮やかな花火を星座を構成するひとつひとつの星に狙いを定めて打ち込んでくような、まこと映像的な美しさを我が身体インターフェイスに描画するのである。おれのなかのトカゲや魚や鳥や花が、この炸裂する星座の光を仰ぎ見ながらびっくりしたりハッとなにかに気付いたりなにとはなしになにとはない方向へのそりと移動したりしているかと思うと、なかなか愉快な気分である。
星と花火と意識の寓話
ちょっといい感じに仕上がりつつあるLuciferian最新作
インタビュー 笠井叡
http://www.pan-kyoto.com/data/interview/Vol-40_i.html
立体音響・ホロフォニクス「花火」
http://www.youtube.com/watch?v=bAQVx8DqHNA&fmt=18
http://mimiochan2.exblog.jp/11645351/
このページ最下層の「< 前のページ」で次に進みます。
ところで、偶然にも「o m n i v e r s e」はボクのお気に入りにも入ってます。ラジオ聴きました。
いや、面白いね〜。ボクも「jam」「HEAVEN」「自販機本」「天国注射の昼」「山崎春美」「ピテカン」「ジョージ秋山」くらいなら語れます(笑)。
それにYAZAWAのHPも秀逸。かつては自身も時代のハッカーだった矢沢にすでにその能力が失われた部分を補填するに余りある内容であるにもかかわらず、矢沢の下僕らに受け入れられなかったとは残念至極。大丈夫なのか矢沢帝国。
6/5(金)の夜のタダ酒祭りが気になるんやけど。