2016年07月30日

シン・ゴジラ

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映画的に官能的だったのは第4形態と伊福部の数秒間だけ。あとは内省的な皮肉に付き合わされる。傑作だの声もわからんでもなし、いやわからんが、右的高揚感を警戒する声もまぁわかる、しかし自分で観た感想としてはどちらの意見も観念的に過ぎる。目の前の画面にエロスと高揚が圧倒的に不足していた。

既視感の記号的コラージュ。それがオタク美学だ、といわれればそうですな、としか言えない。そしてそこにそれなりの批評性をもたせる、まぁそういうこともやってるだろう。

しかしだね、庵野秀明がやったことは結局のところ、子供たちから夏休みのゴジラを取り上げて、難解な政治言語で埋め尽くし、お手盛りのオタク記号を適当に配置して、悲しい顔をしてほい、と置いて見せた、そういうことではないか。大人の事情や実存的葛藤を織り込んで、おとなこどもの怪獣映画で街をぶっ壊すのは、いい。いいから、なんかもっとこう、小学生をウォーと興奮させる、ゾゾーと脅かす、反抗的な大人に対しては晦渋な暗号作法に則りかすかな勃起と潤滑液分泌をトリガーする抵抗不可能な記号を意表をついて忍ばせる、それを最低限のお約束として、満足いく分量を確保して、その上で、どうぞやりたいようにやって欲しかった。

おれは今日、なんか間違えて2,500円払ってグランシネマだかなんだか、なんか偉そうな劇場のチケットを買ってしまった。普通のスクリーンに隣接してるのだが、大人なラウンジでワンドリンクがついて、ワインとか頼むと番号札と引き換えにテーブルまで持ってきてくれるのだ。シートはフルリクライング可能で、スリッパも備えてあった。よく調べずにいって一番近い上映を選んだらそれだったのでやや面食らったが、一体だれがこのグランシネマ体験を求め、またこれに満足しているのか、疑問を感じた。なんか静かげなラウンジはしかしメニューは同じなので、そこで食すのはホットドッグとかなんか過剰に高級感を謳った500円のソフトクリームであり、大人ラウンジといってもハリボテ感が半端ない。だったら普通にしてて欲しい。あちらのほうで老夫婦が店員に横柄な態度でなにかいっている。上映直前に買ったチケットなので一番前の席だった。フルリクラインングできてよかった。一番前を舐めてた。

そして「シン・ゴジラ」を観た。
おっさん、おっさん、おっさん。しょっぱなからおっさんの洪水だ。画面の空間的・時間的比率はともにおっさん率90%だろう。あとは若いおっさん。政治的にぎりぎり正しくいえばアスペルガー的知性を代表する各界の変わり者たち。数十分のおっさんと若いおっさんと変わり者が早口で政治言語をまくしたて、そのどうしようもなさを諧謔的に演じてみせる。ちょっともうお腹いっぱい、と思った頃合いにはじめて登場する、生き生きとした生物的な魅力を放つのがバイリンガルのカヨコ・パターソン。対比。うん。
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けどあの人も悪くなかった。あの不機嫌そうな女の人。アニポールきょうこ氏を不機嫌にして賢くした感じで、親近感が持てたからかも知れない。そこも対比だ。うん。市川実和子だったのか!(後日註:市川実日子さんでした)

自衛隊の号令とか公共のアナウンスとかはリアリティがあっていいんだけど、役者の喋りになると途端にそのリアリティがなくなる。役者も全部ああいう普通の喋りにすればいいのに、と日本映画を観るといつも思うが、なんかそうもいかない事情があるのだろう。あの白髪のよく見る人はよかった。あと総理代理。若いおっさんはかっこいいのか悪いのかよくわからない振る舞いで、あれ役者養成所で徹底的にああいう風に演じる訓練をしてるんだとしたら、なんでだろう。まぁなんかいいんだろう。リアリティがないならないで魅力的であればいいんだが、まぁそんなに魅力的でもない。お金を払ってでもうっとりと見惚れたくなるような魅力を放ってるわけではない。カヨコさんが魅力的なのは、まわりをおっさんで固めてるからというのもある。片桐はいりもよかった。ああいう状況で、なんかふと欲情するとしたら、ああだと思った。そこは庵野わかってると思った。

背びれ。背中を向けた時に最強の最終兵器。ゴジラは安産型の自閉症。最初でてきたときすごい可愛い。太くて大きいゴジラを、細くてもじゃもじゃしたもので絡め取る。男根兵器は一切効かないゴジラだが触手には弱い。ぶっ壊しながら東京観光。新幹線と山手線。恵比寿のトンネル。鉄ちゃんの東京ノスタルジー。わかる。むかし高橋幸宏が「好きだけど嫌いな街」と表現した東京への郷愁。

「ガッチャマン」みたいに狂ってないけど、じゃ冷静だったらいいか、というとなんかそうでもなかったなあ、という感。
ゴジラ以外はおっさんと電車と自衛隊しか写ってない。まぁ映画ってそういうもんだったかも知れない。わからない。

まぁなんかいろいろあるけど、ゴジラをこどもに返してあげて欲しい。大人げないと思います。

http://shin-godzilla.jp




posted by bangi at 21:54| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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