2013年10月14日

メルマガ「月刊23曜日」と「ケイオスマジックワールドミーティング2004荻窪」


運営していたドメインの整理などで閲覧できなくなっていた過去のコンテンツを整理して再アップしてみた。

このブログ「月刊23曜日blog」は本来、2002〜06年の間配信されたメールマガジン「月刊23曜日」の「編集部だより」として開始されたものであった。メルマガ配信停止から既に7年が経過しているので最近ツイッター東京リチュアル関連からこのブログにたどり着いた人にはご存じない方も多いだろう。今回再アップしたのはこの本家「月刊23曜日」全バックナンバーである。再アップにあたりツイートボタンなどを追加した。


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リンク:月刊23曜日 http://tokyo-ritual.jp/23/


振り返るに2002年に「月刊23曜日」が開始されたのは、2001年中央アフリカ・ザンビアでの日蝕パーティへの旅から帰還して間もなくのことだ。南アフリカからザンビアまでおよそ1ヶ月をかけて旅した経験から受けたものがアウトプットされているのだが、当初はディスコーディアンやサブジニアスといったアメリカ西海岸メタ宗教カルチャーの影響が最も強く、初期の号のイメージはそのままPrincipia Discordiaだ。2007年に邦訳されるR.A.ウィルソン「イルミナティ」3部作からの引用も見受けられる。

編集者としてクレジットされているシェークスピアボーイズは自分含むライターチームで、TOKIONとか他のもう忘れた種々の雑誌に宗教法人アレフインタビューや温泉ルポなどを寄稿していた。ALAR MATARは当時我々がアラーと呼んで崇拝していた荒俣宏氏へのオマージュを込めたペンネームで、当然荒俣宏氏ご本人ではない。

諸々のリスペクト、引用、連想のモアレのような「月刊23曜日」だが、ディスコーディアンからケイオスマジック、ニューエッジに至る70-90年代西海岸カルチャーとの関連を指摘する声は全くといっていい程なく、端からみれば「何をどうしたいのだろう?」といった訳の分からないメールマガジンであっただろう。

しかし何でもやっておくといいもので、後に2007年にジョエル・シューマッカー監督・ジム・キャリー主演作品「ナンバー23」が公開されると、文化的背景を絡めて作品解説を執筆して欲しいとの依頼が来た。

リンク:ナンバー23解説原稿 http://23youbi.seesaa.net/article/138229267.html

ほぼ時を同じくして先述「イルミナティ」3部作が邦訳され、「遂に“23曜日”がやってきたのか…!」と小躍りしたものだが、映画は特に話題になることもなく街にコード23が溢れることもなく今にいたる。




もうひとつ、資料的な価値を鑑みて再アップしたのが、2004年東京・荻窪で開催したイベント「CHAOS MAGIC WORLD MEATING」の告知ページだ。

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リンク:CHAOS MAGIC WORLD MEATING http://tokyo-ritual.jp/cm/index.html


当時のIOT JAPANを率いていたDead Jellyfishと二人で、アメリカ・カナダ・オーストラリアから現役のケイオスソーサラー達を招き、3夜に亘ってレクチャーと儀式、ダンスフロア(これは集客が少なく中止された)が催されるというチャレンジングなイベントだ。外人勢がAnton Channing, Jaq D Hawkins, Sean Scullion, Dead Jellyfish、日本人勢としてOTOのHieros Phoenix氏、不肖バンギと蒼々たる面子と豪華内容、そこに込められた時代の熱を上記サイトから感じ取って欲しい。しかしながら、会場に足を運んでくれた知人以外の純粋なお客さんは僅かに数人であった。当時はツイッターも東リチュもなかったのが悔やまれる。

中日の深夜の儀式ではたまたま通りがかって入場してきた酔っぱらい外人も含めてアポロン召喚儀式を行った。輪になって全力疾走し、最終日の客入りを太陽神アポロンのご加護でなんとか盛り上げよう、という意図を込めた儀式であったが、客足は変わらず、一人か二人。DJと「儀式は効かなかったかな?」とうなだれながら朝の中央線で帰路につこうとすると、連日小雨だった天気が唐突に快晴で、はっと目が覚めるような美しい早朝の空に二人して心奪われた。そしてお互いに顔を見合わせ「アポロンな」「そうなんよな」「こういうもんなんだよな」「いつもな」と、力なく、しかし大変壮快な気分でいつまでも笑った。人生でみた最も美しい東京の朝のひとつだった。

「魔術系のイベントは客がこない」は当時から定説であった。複数組織をまたがるフラタニティの絆を持ってしても、である。しかしながら、おれもDJもくじけずイベントを開催し、公開儀式を催してきた。この時の経験がなければ現在の東京リチュアルは存在しなかっただろう。なんでもやってみること、やっておくことが大切なのである。付記すると、このイベントの頃が東京のポストケイオス的魔術人脈は最も充実していた気がする。Illuminati Of Thanateros, Temple Of Set、その他様々な文脈のケイオス的グループ(ほぼ外国人であったが)が関東に存在し、充実した交流、議論、友情が交わされた。この辺りの東京ケイオス人脈とシーンがレビューされることはおそらく未来永劫ないだろうが(*)、現在の西洋魔術シーンの状況しか知らない人には「本当にそれがあったのだよ、かつて、ほんのひと時ね」と証言しておくとともに「ともかくも何かやっておけば、後でなにかになる」とアドバイスさせていただく。

魔術理論的には、熱力学第二法則に支配されたこの物質宇宙では、何かを行って何も起きないということはあり得ないのである。

*IOT Japan周辺で騒動が巻き起こり消滅するまでの間の雰囲気は、事後的ながらこのログに種々のエピソードが記録されている。ログが残るということが重要だ。
リンク:混沌ログ:http://kontonlog.blog105.fc2.com


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2013年10月05日

縄文系現代魔女術ワークグループ「ウフィカ」考

English translation:
"Of Uphyca" http://lumitan.tumblr.com/post/65622178301/of-uphyca

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ウフィカは実践魔女術研究家・谷崎榴美を中心に2013年8月に創設された現代魔女術ワークグループである。2013年10月現在10余名の参加者が集い、オンラインで活発に交流している。

http://uphyca.org

ウフィカの提示する「魔女」潮流のスコープは、フランス-イングランドの伝統魔女宗(Traditional / Hereditary Craft)からクロウリー/ガードナーの手による復興魔女宗(Gardnerian WICCA)、60-70年代のネオペイガン潮流の分岐、ケイオスマジック経由新魔女宗のシュメール/バビロニア的隔世遺伝に亘る広範な系譜を見据え、その衝動と持続を空間的にも時間的にも「いまここ」に繋げるものである。すなわち狭義の「西洋魔女宗」の参照・模倣に留まるものではなく、ある意味では逸脱しつつ、パラダイムシフト的な跳躍によって原初の衝動への回帰と再生を目論むものでさえある。本稿では幾つかのキーワードに沿って、ウフィカの概要を紹介する。

■ソロ魔女のオンラインワークグループ
ウフィカは13人一組といった様式を持ついわゆるカヴンではなく、既に何らかの自己参入儀式を経験したソロの魔女たちのオンラインワークグループである。この点の類推にはケイオスマジックムーブメントを牽引した英国グループ、IOTが結社(Order)ではなく組合(Pact)を標榜したこと、同じくポストケイオス的オンラインコミュニティAutonomatrixなどが参照されるだろう。メンバーはノート共有アプリEvernoteにより、それぞれの夢日記や、段階的に提示される課題をはじめ様々なエクセサイズを相互に編集可能なノートとして共有する。ウフィカは構造上、オフラインでのミーティングを「必要としない」グループデザインが企図されている。これは参加者の地域的制限を回避する実利性のみならず、カヴン(的共同体)の電子的な拡張という実験性を徹底する狙いも込められている。

「電子的に拡張されたカヴン」は、その参照系としてマーシャル・マクルーハンのメディア進化論、テレンス・マッケナのポストモダン・シャーマニズムに加え、伝統的な魔女のトポロジーをも内包する。すなわち、中世ヨーロッパの魔女が使用した「飛行軟膏」、幻覚性植物による変性意識的離脱・飛行体験の焦点としての「ハイ・サバト」である。復興魔女宗の一派Sabbatic Craftにおいて「ハイ・サバト」は、エノク魔術における「アエティール」に相当する魔術的トポスとして提示される。中世ヨーロッパの魔女カヴンでは、メンバーが一同に会するのは1年に1度程度であったという。彼らはカヴンの物語、アストラルイメージを符牒として共有し、それぞれの暮らす場から変性意識下の「飛行」によって集合意識の焦点としての「ハイ・サバト」に赴いたのである。オフラインミーティングを介さず、電子メディア空間での物語(Narrative)の共有と意識の同調、交感を強化することは、ウフィカメンバーに課せられたエクセサイズでもある。

■縄文の女神信仰と巫女文化
ウフィカはアイヌ語で「焼き尽くす」を意味する。西洋魔女カヴンが拝する大地母神、有角神に該当するウフィカの神的イメージは、縄文期日本の出土品に透かし見る古代の女神であり、沖縄-台湾-ポリネシア、北海道-ロシアの「ヤポネシア」弧に広がる巫女文化に保存されている「火」のイメージに集約される。ウフィカメンバーはそれぞれが自己参入を果たした魔女でありながら、縄文の女神を祀る「火の巫女」としてのワークに取り組む。ある意味ではウフィカは縄文復興ワークグループであり、現代の実践シャーマニズムであり、ポストモダンの復興拝火宗でもある。

ウフィカの拝する「火」とは、それ自体最も根源的であり直接に体験されるエネルギーでありながら、古代より綿々と燃え続ける生命-意識、そして2011年の原発事故によって爆散した核エネルギーの重層的メタファーでもある。現時点で唯一使用されているウフィカのグラフィックイメージは、福島原発から外洋に流出する放射性物質の拡散予想図を炎に見立てたものであり、それは極東の竜がのばす火の舌のように見える。中東に保存される古代拝火教、特にイラクのクルド人宗派イエジディ派は、ペルシャ・スーフィズムと堕天使神話を介して西洋秘儀文化と「ツバル・カインの血族」としての古ヨーロッパ魔女宗に接続する。民俗学、比較宗教学、文化人類学の成果を踏まえた緻密なナラティブの構成により、現代日本人の「いまここ」に直接に繋がるスピリチュアル・エクセサイズと共同体のユニバーサルデザイン - Jomonian Witchcraftが目論まれている。

■電子的に拡張される口承文化装置
ウフィカのプラットフォームは先述のEvernoteやSkypeなどのネットツールであるが、要点となるエクセサイズ、課題、段階的イニシエーションは全て語りを録音した音声ファイルとして共有され、テキストデータは最小限に抑えられている。無文字文化であった縄文期日本の霊性に意識を向けるワークと継承の方法論が、発話修練と聴覚体験によって構成されている。ウフィカメンバーは火の巫女としてのワークの過程で、耳を澄ませ、自ら語ることによってのみウフィカの物語(Narrative)を継承していく。この特徴によって、ウフィカの段階的イニシエーションは記述や免状に依らない、参入者自身の心-身的Psycho-somaticな能力によってのみ伝達され得るものとなり、本来的かつ本質的な秘儀共同体のセキュリティが担保される。母から子への手遊び歌のように、ミニマルで生命力溢れる文化遺伝子のヴィークルが電子空間のパロール(語り言葉)として拡散していくのである。

ウフィカメンバーによる現時点での定例儀式に、毎週水曜日に開催される定例拝火式がある。23:00から30分間、ウフィカメンバーはチームリーダーの語りによる誘導瞑想音源を聴きながら、この時間に世界中で灯される「火」の観想と所定のアストラルイメージワークを行う。この儀式はウフィカメンバー以外にも広くツイッターなどで呼びかけられ、ロウソクなど小さな火を灯すことで気軽に参加できる、電子空間を介したオープンミサといった様相を呈している。心身的技法の実践に集中する女性限定の「火の巫女」たちと別に、ワークを実践しない「崇火会」が組織され、ウフィカの主旨に賛同する広く一般の男女が集い、人的・学際的サポートを行っている。

■「縄文魔女」のユニバーサルデザイン
みてきたように、ウフィカの目指す地平は西洋魔女宗の「お習い事」的な矮小化や趣味的没頭にはなく、女性的-心身的文化伝承の電子的-時空的拡張と、それに連なる「魔術的記憶想起」或は「転生」の文化装置デザインと実践、現代の個々人がそれを生き切ることが可能なユニバーサルな「魔女」のナラティブの獲得にある。ウフィカの標榜するJomonian WitchcraftとそのMethodologyはあらかじめ空間的制限を超え、文化遺伝子として時間的制限をも超え得るものとして、グローバルな広がりを指向していくものとなるだろう。

ウフィカについて語り足りない事柄も多く残るが、特に古ユーラシア神話世界やヨーロッパ伝統魔女宗、ガードナー以降20世紀カウンターカルチャーとしてのネオペイガン運動とウフィカが切り結ぶ文脈については、東京リチュアルより2013年年末から順次刊行予定の電子書籍シリーズ「伝統魔女宗叢書」「ルシフェリアン・ウィッチクラフト叢書」の翻訳資料・書き下ろし著作などでより詳細に論じていく予定である。




[参考リンク]
縄文魔女術実践グループ ウフィカ:http://uphyca.org
ウフィカ・twitter:https://twitter.com/UPHYCA1
水曜拝火式・twitterハッシュタグ:#uphycaWFR
谷崎榴美・twitter:twitter.com/LUMITANizaki
東京リチュアル・twitter:twitter.com/TokyoRitualJp
posted by bangi at 09:43| Comment(0) | 神秘 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年06月01日

人工言語「アルカ」作者による伊勢原市元妻刺傷事件と動画について

以下の原稿はスピ系サイト「ハピズム」に掲載された原稿の、別バージョンである。

ハピズム記事:
前編 http://happism.cyzowoman.com/2013/06/post_2495.html
後編 http://happism.cyzowoman.com/2013/06/post_2500.html

文字数の関係でぼやけてしまった論旨を、お互いに補足しあうものとしてここに収録しておく。



神奈川県伊勢原市で起きた路上切り付け事件の容疑者、貞苅詩門容疑者が、ファンタジー系で一定規模のクラスタ(関心層)を形成している人工言語「アルカ」の作者セレン・アルバザード氏その人であった、ということで話題を呼んでいる。

 貞苅容疑者がyoutubeに投稿した動画は「中二病をこじらせた」症例として掲示板などで話題になっているが、いずれの動画にも目を見張るべきクオリティや、画面に映る貞苅容疑者のパーソナリティに発見と謎があり、単に「こじらせた中二病」として片付ける訳にはいかない深みが感じられる。この動画を足がかりに、貞苅容疑者は一体何をしようとしていたのか? 人工言語アルカのリアリティもあわせて、プロファイリングを行ってみよう。

■人工言語アルカとは?

 Wikipediaによると、アルカは1991年から制作が開始された人工言語である。エスペラントなど既存の人工言語と異なり、既存言語から語彙の借用を行わない、全くのゼロから背景となる風土・文化とともに創作されている。20年間で15,000語の語彙を擁するに至り、動画にみられるように短編動画や、アルカだけで執筆された小説も既に存在していることから、人工言語としては他に類をみない完成度に到達しているといえる。

 報道では、セレン・アルバザードこと貞苅容疑者は1981年生まれとなっているので、人工言語アルカプロジェクトの開始時点では10歳ということになる。やや早熟な異才とは言えるが、特にこの点を持って尋常ならざる天才性を示すものとは言えまい。注目すべきは、その後も「前中二病的」衝動を維持し、大学で言語学を専攻してアルカを一定のクラスタを要するプロジェクトとして離陸させた、その弛まぬ情熱と努力である。彼は確実に、幼少期から自分の意志を自覚し、自らを律してその実現に邁進することができた天才気質であると言えるだろう。動画に見る容疑者の面構え、立ち姿には堂々たるものがあり、いわゆる「オタク的」卑屈さとは異質の力強さ、一種のカリスマ性がみてとれる。

それでは、問題の動画をみていこう。

■貞苅容疑者出演・短編映画『魔法堂ルシアン』3つの謎 

 この「知られざるカリスマ」を巡る風景には奇妙な歪みがある。まずは全編アルカによって演じられる短編動画「魔法堂ルシアン」をみてみよう。



1、律儀なカット割りとプロレベルの照明
 アーティスティックなスキルやこだわりを持たない「純粋な」オカルトヘッドたち
が日々投稿する凡百の動画コンテンツは、回しっぱなしのカメラ前で延々と自説を論じる類いのものが多く、カット割りに拘る人は少ない。しかし、この動画は、現場でセリフを「順撮り」したのではなく、撮影時点で完全にカット割りが設計されたコンテ台本の存在が伺える。また、どのカットも照明によるハイライトが正しく設計されており、現場なりゆき撮影の場合に起こる“むら”がないのが特徴的。これはアルカ世界を一定のクオリティを持つ表現物として設計、具現化するプロ的なスキルが存在することを示している。

2、“絞り”ゼロのフラット映像 
 最近では一般的となった、デジタル一眼カメラによる浅い被写界深度(ピントのあう範囲の狭さ)による「雰囲気」がなく、ビデオテープ/カメラ時代のフラットな質感に基づいた「テレビ的」演出話法に貫かれており、貞苅容疑者の強い美意識とはやや異なる「垢抜けなさ」がみてとれる。比類なき人工言語の創作者としてはあまりにそっけない、情熱、美意識、表現欲求の欠落を感じさせる。

3、作為的!? ファンタジー的美術演出がゼロ

全編人工言語アルカ+日本語字幕で展開するにも関わらず、「一般的住居での撮影」「一般的な小道具」など「ファンタジー的」演出が施されていない。これだけ緻密な撮影計画を実行できるなら、ベージュ単色のカーテンを高級感のある重厚なベルベットに変更するなど、簡単にできる範囲でももう一工夫があって然るべきだ。画面から見てとれる「美術演出」は、不思議な文字盤の時計と、少女が手にとり眺めるアルカ語の本のみであり、あとは住居の本棚、小物などをそのまま使用している。あるカットでは壁のコンセントがあられもなく映り込むなど、現代日本の風景と無節操に地続きなのだ。

■短編映画『魔法堂ルシアン』からわかった3つのこと

 この無節操さから、筆者は2つの点を指摘したい。

貞苅容疑者は、カリスマでありながら孤独であった
映像を見る限り、プロが作ったとしか思えないクオリティ。しかしそのクオリティは、一手間を惜しまない情熱が欠落した、業者的な退屈さに支配されている。この点から、この映像はあまり親しくない、少なくともアルカクラスタの内部ではない、映像制作業者に発注して制作されたものではないかと推測できる。ここに貞苅容疑者を巡るアルカクラスタ内人間関係の稀薄さ、孤独が読み取れる。

2、純粋な創作世界アルバザードは、現代日本と癒着した「代替現実」へと移行しつつあった→貞苅容疑者にとって、アルバザードとアルカは高いリアリティ強度を持って構築された芸術的異世界であった筈だ。しかしながら『魔法堂ルシアン』は、魔法のアンティークショップに並ぶ品々に弓と日本刀があり、少女は和服を着ている。完全にアプリオリな人工言語アルカの達成とは似つかわしくない、アニメ・ラノベ消費者的な打算が蔓延している。貞苅詩門として生きる現代日本と、セレン・アルバザードとして生きるアルカ世界は奇妙に癒着し、純粋な強度を持つ創作世界から、曖昧なオルタナティブリアリティ(代替現実)への移行段階にあったことが伺える。これは芸術的な敗北とも、魔術的な成功ともとれる、この事件ならではの特筆すべき点である。

この推測は、次の動画で明らかになる。

■動画「発勁ノヴァ(nova)



この動画で、貞苅容疑者は「ユベール」という、アルバザード国の格闘技を紹介する下りで

「アルバザードにある、というか現実にまずあるんですが」

…と述べている。

続いて彼は、ユベールが「アルシェ」と呼ばれる現実のアルカクラスタ内で実践されている格闘技である、と述べている。続いて演じられる「ノヴァ」という一種の気合法の演舞には、確かに独特の動きのキレと説得力がある。

この点から、貞苅容疑者と彼を中心としたアルカクラスタ内の、特にインナーサークル的な親密さを持った周囲では、一定の強度を持ったリアリティとして「ユベール」が共有されている、という主張が読み取れる。しかし、その「親密なインナーサークル」は本当に存在するのだろうか? 「自撮り」の画面からはその熱気は感じられない。このリアリティは、貞狩容疑者とその周囲の人達の間に「温度差」がある、微妙な状態に宙づりになっているように感じられる。

「魔法堂ルシアン」の舞台が現実の日本の風景にレイヤードされたものとなり、アルカ、アルバザード、ユベールが純粋な創作世界から離陸し、合意現実と緩く並走する「オルタナティブリアリティ(代替現実)」へと魔術的に実体化/芸術的に弛緩していくプロセスが、この動画の「貧相さ=現実と地続きの弛緩感覚」として露呈しているように思える。アルカを支えるクラスタの活力と、実際の貞苅容疑者を包む孤独の薄雲の奇妙な並存は、この芸術的異世界/魔術的代替現実世界に引き裂かれつつあったアルカに対する、関係者個々人の温度差からくるものではないか。

■『魔法堂ルシアン』『ノヴァ』を見て、浮かび上がる、貞苅容疑者の人物像

 この2つの動画から読み取れるのは、アルバザードを純粋な創作物から「魔術的代替現実」へと変質させようとする貞苅容疑者の意志と、その困難である。事件後「トールキンになり損なった」と称されるように、彼の創作人工言語は言語学的に見て他に類を見ないほどの達成をなし得ている。しかしその言語学的・芸術的達成は次第に現代日本の「合意現実」と癒着し始め、同時に貞苅容疑者とアルカクラスタの間に温度差を生む。

 この困難の原因としては、彼の創作が「言語」という、リアリティの基底部に抵触するものであったことによる宿命的な避けがたさ、そしてそのことへの無自覚、無防備が指摘できよう。彼は一種の天才性を持って、エスペラントの創始者ザメンホフも、完全言語を探求した哲学者ウンベルト・エーコもなし得なかった言語学的偉業を、2chの人工言語板など大衆的なネットツールを使い、萌え絵に彩られたポップカルチャーとして軽々と達成してしまった。彼は在野の言語学者として歴史に名を残すほどの栄光を手にし、余生を送る事も充分可能だった筈だ。しかし彼は粗暴なストーカー行為と刺傷事件を引き起こし、自らその恩恵に浴する権利を捨て去った。一説によると、今回の犯行は1年ほど前に執筆され近親者のみに回覧された小説「セレンの書」の記述と驚くほど類似しているという。   

 ここに、彼が自身の創作言語を通じて自らを取り巻くリアリティを相対化し、曖昧な中間領域としてのオルタナティブリアリティ生成に向かう欲望、コンセンサスリアリティ内で約束された言語学者としての栄光よりも、オルタナティブリアリティを創造する魔術師としての挑戦に突き進んでいった確信的動機が見て取れる。彼の失敗は、合意現実への働きかけが粗暴な刺傷行為としてしかイメージできなかった、彼の魔術的想像力の貧しさにある。彼は言語学者としては一流であったが、魔術師としては二流であった。では彼は魔術師として、どのような態度で望むべきだったのだろうか。

■魔術師セレン・アルバザードの限界

 言語の創造は「神の業」にも比せられ、多くの哲学者、神秘家たちが探求してきたテーマだ。最も成功した人工言語エスペラントの創始者ザメンホフは、エスペラント運動中後期には語彙の編纂の第一線から自ら退き、「ホモラニスモ(人間主義)」と呼ばれる一種の倫理思想を提唱した。この事が、純粋に言語運動としてのエスペラントに期待していた層からの反発を呼ぶことになるが、結果的にザメンホフの「ホモラニスモ」はエスペラント文学のテーマとして生き残り、世界中の哲学者・思想家・社会運動家にエスペラントを印象づける一助となった。日本では宮沢賢治、大本教の出口王仁三郎といった文学者、宗教者がエスペラティストとなっている。

 翻って、セレン・アルバザードこと貞狩容疑者の創造した人工言語アルカは、純粋にファンタジー世界の設定に留まり、アルカならではの思想、象徴体系を育むことはなかったと思われる。これはある意味当然だろう。エスペラントでさえ、ホモラニスモ色は「エスペラントは宗教か」という論難を巻き起こし、運動を危機に陥らせた。萌えキャラとファンタジー設定に彩られたアルカが思想や倫理に接近すれば、瞬く間に「カルト」認定され、多くの離反者と熱狂的信者にクラスタを分裂させてしまうだろうことは想像に難くない。しかしながら、セレン・アルバザードがアルカを純粋な創作世界から代替現実へとシフトさせるという魔術的作業を行うのなら「アルカの倫理、思想、象徴体系」を構築するというこの大作業に、どうしても着手しなければならなかった筈だ。

 本稿冒頭で触れた動画「魔法堂ルシアン」で描かれる魔法の世界には、一貫した象徴性、深い文学性といったものが見受けられない。かわりにそこにあるのは、場当たり的で「それっぽい」だけの小道具、死んだ母の着物に執着する少女に魔法の霊薬を飲ませるだけの安易な救済、その救済の結果イケメン魔術師に恋慕する少女、といった、ラノベ的「中二」設定の虚ろな表象だ。ここに魔術師セレン・アルバザードの限界があった。もしも筆者がこの動画の制作スタッフとして関与していたなら、劇中の花の名前、その花言葉、並べられた石とその魔術的効能、暗喩と象徴性によって描かれる少女の内面の変化、といった要素を徹底的に作り込んだだろう。それはたとえば「アルカのことわざ」を創造し、それに基づいたストーリーテリングをつくりこむ、といった作業となった筈だ。つまり、アルカに思想的な必然性と一貫した象徴体系を付与し、文学的創造性の泉となり得る深み、「アルカの魂」を創造するという大作業だ。貞苅容疑者はそこには目を向けず、肥大した自意識との虚ろな戯れに終始していた。そのことを伝える動画として、もう一本の「自撮り」投稿動画がある。

■虚ろな記号で満たされた、オタク魔術師の内面



 この動画では、貞苅容疑者は路上の鏡にタンクトップ姿の自身を写し、立ち姿をチェックするような「自撮り」を披露している。なるほどなかなか見事な体躯ではあるが、ここに露呈しているのは、ナルシズムとともに身体性に没入する閉塞した自意識と、その稚拙な表現、幼児的自己確認の虚ろな儀式である。精神分析家ラカンの「鏡像段階」理論を思い起こさせるような、どこまでも孤独な心象風景だ。彼の内面に息づいた魔術的ペルソナ、セレン・アルバザードのネイティブタンであった筈のアルカには、人間の魂の深みに触れる力が付与されなかった。かわりに、ゲームキャラのような髪型、我流で鍛え上げられた中二的身体、オタク市場に氾濫する記号、記号、記号で埋め尽くされていた。それ故に、彼は言語の創造という「神の業」の領域を侵犯した時に、自身の心魂にかかる圧力に耐えきれず自壊したのではないか。

■アルカの今後

 高度な達成と優秀な人材に恵まれた人工言語アルカの未来には、創始者の痴情事件によって葬ってしまうには勿体ない可能性がある。現在アルカクラスタでは、2011年時点での「制アルカ」を古語として保存し、ラテン語に倣って新しい語彙を「俗アルカ」として吸収・継続していこうという議論もあるらしい。このクラスタが高い知的水準を維持し、真剣に人工言語の可能性を探求していることが窺い知れる。しかしその為には、オタク的記号消費から一歩踏み出し、人類文明に寄与するアルカの理念、人間精神の深みに脈動するアルカの象徴体系、つまり「アルカの無意識」のデザインに、勇気を出して一歩踏み出さねばならない筈だ。先述のとおり、エスペラントの歴史において、その魂ともいえる「ホモラニスモ」の探求はエスペラント運動を二分する論難を招いた。現代日本で、ネイティブスピーカーの内面に「アルカの無意識」が芽生える時、社会の合意現実は強い拒絶反応をもってそれを攻撃する可能性は高い。しかし、儀式を失い、言霊を失い、虚ろな記号遊戯に没頭する現代日本から、本当の意味での「魂の言語」を創造すること、それこそが、魔術師セレン・アルバザードが目論みつつ、貞苅容疑者には荷が重すぎた、大作業だったのではないだろうか。

※参照URL
http://rokurei60.wordpress.com
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2013年05月25日

6月「愚者の旅」トート版 / KAOSGYM / 自分の儀式のつくりかた など


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6/22(土)23(日)24(月)は、東京・汐留で東京リチュアルと現代タロット研究会の講座を集中開催。

5/18渋谷トランプルームでスピ・占い系大手サイト・ハピズムとの共催「ハピズムサロン」に続き、賑やかしい感じが続く。気は休まらないが充実しており、非常に楽しい。現タ研・東リチュ講座の回数を重ねるたびに、新しい出会いと視点、思いもよらなかったニーズなどを発見し、いま東京はかつてないほどの"Occulture"ムーブメント(ブームにあらず)のネットワークが静かに接続拡大しているように実感する。たぶんこの空気から真に新しい価値を創造していくのは、いま10代20代の若い人たちだろう。彼らが古い文脈に足を掬われることなく、のびのびと快活に惑星規模の拡張神経系に接続していくのは明らかだ。今起きていることはその露払いに過ぎない。

日程は以下の通り。各講座詳細は下のリンクを参照していただくとして、「いま」の熱気のこもった空気感を味わうには非常にいい季節、タイミングだと思うので、ご縁を感じた方は遠慮なく、なにとぞひとつ。

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■6/22(土)
13:00-16:00 Salon de 現タ研「愚者の旅 ライダーウェイト篇」
17:00-21:00 バンギ・アブドゥル「KAOSGYM」

■6/23(日)
13:00-16:00 Salon de 現タ研「愚者の旅 トートタロット篇」
17:00-21:00 東京リチュアル「自分の儀式のつくりかた」

■6/24(月)
13:00-16:00 Salon de 現タ研「愚者の旅 ライダーウェイト篇」

■受講料
愚者の旅(各回):7,000円
KAOSGYM/自分の儀式のつくりかた(各回):6,000円
※会場費別途(人数割:1,000円以内)

■上記全講座のうち、
2講座お申し込みの方:1,000円割引
3講座以上お申し込みの方:2,000円割引

■詳細ページ:
東リチュ http://tokyo-ritual.jp/event.html
現タ研 http://eugenius.jp/gentaken/salon_vol4_5




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2013年04月07日

【ストリーミング】アレイスター・クロウリー「法の書」朗読会2013 on Ustream

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セレマの聖なる3日間
OTO公式訳によるアレイスター・クロウリー著「法の書」
ちゃんと!朗読会2013

【詳細URL(ストリーミングURLへのリンクがあります)】
http://tokyo-ritual.jp/podcast.html

4/8 0:00- 第1章 朗読・谷崎榴美
4/9 0:00- 第2章 朗読・御影舎朔
4/10 0:00- 第3章 朗読・バンギ・アブドゥル
(日付変わってすぐの深夜です!お間違えなく)

テキスト:「法の書」OTO公式訳 (Sor. Raven訳) 
http://www.otojapan.org/nihil/docs/L220_Japanese.pdf

【去年の朗読会の模様】
http://tokyo-ritual.jp/videos.html#al
http://23youbi.seesaa.net/article/263790318.html

主催:東京リチュアル http://tokyo-ritual.jp
※本番組・イベントは東方聖堂騎士団、OTO JAPAN他関連団体とは一切関係ありません。
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2013年03月27日

【現タ研】3月〜5月のタロット関連スケジュール

現代タロット研究会(現タ研)での活動が活発になってきた。
3月から5月のスケジュールを更新してみた。我ながら忙しそうだ。

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現タ研 http://eugenius.jp/gentaken/

現タ研 Facebookページ: 現代タロット研究会

たくさんトピックがあるのでここで少しまとめておきます。



■翻訳者による「タロットワークブック」実践講座、4月大阪&5月東京開催!

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4/13(土)大阪/入門編 10:00 – 16:00
4/14(日)大阪/初級編 10:00 – 16:00
5/19(日)東京/入門編 10:00 – 16:00
5/20(月)東京/入門編 10:00 – 16:00

好評のみっちり1日講座、遂に東京でも開催。
詳細:http://eugenius.jp/gentaken/tarotworkbookcourse/



■新企画「Salon de 現タ研」は、タロットを楽しむティーパーティ・レクチャー!

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タロットに関する様々なテーマで、お茶とお喋りの午後を楽しむ”Salon de 現タ研”。実占経験豊富なタロティストも、幅広い視点からタロットを知りたいアーティスト、研究者も、ティータイムの楽しみとしてタロットに親しみたい趣味人も、どなた様もお気軽にご参加ください!

Vol.1 「FOOL’S JOURNEY – 魂の旅としてのタロット」(岡山)
3/30(Sat.) 「愚者の旅 - 大アルカナ22枚の物語」
3/31(Sun.) 「実践基礎・3カードリーディング」

※これは国内初・アイソレーションタンク併設の心療内科HIKARI CLINICの週末ワークショップの一環で行うもの。心療内科ならではの霊的で落ち着いた雰囲気で、アクティブイマジネーションなどを挟みながら大アルカナ22枚の物語「愚者の旅」を体験するもの。試みとしては一番刺激的で、今から楽しみ。
詳細:http://eugenius.jp/gentaken/salon_vol1/

Vol.2 「タロティストの万華鏡」(大阪)
4/20(Sat.) 「タロティストの必要充分カバラ」
4/21(Sun.)「タロットへの数秘術的アプローチ」

※これは以前は「ワークブック講座」中級以上にいれていたものを、個別のトピックごとに切り分けて受講・聴講しやすくしたもの。
詳細:http://eugenius.jp/gentaken/salon/

Vol.3「FOOL’S JOURNEY – 魂の旅としてのタロット」(東京)
5/17(Fri.) 「愚者の旅 - 大アルカナ22枚の物語」

※これは3/30岡山と同じ内容です。場所は東京リチュアルオフィスルームにて。
詳細:http://eugenius.jp/gentaken/salon/

東京リチュアル:http://tokyo-ritual.jp
東京リチュアル Facebookページ : http://www.facebook.com/tokyoritual


バンギ・アブドゥル 予約鑑定「Hair & Fortune」(岡山)
4/6(Sat.) 4/7(Sun.) 11:00 – 19:30

※前回やってみた楽しかった&好評だった、ヘアサロンViharaでの鑑定。髪を切りにきたお客様が開催を知って、ついでにタロットをめくっていくという出来事に個人的に示唆深いものを感じた。ヘアカットも占いも、気分を変え、自分を変え、未来に自分を開いていく、ささやかなおまじないのようなものだ。お洒落で居心地のいいサロンの2F多目的スペースに、春の日差しを受けながら2日間常駐しています。
詳細:http://eugenius.jp/gentaken/info/




予約・お問い合わせなどはそれぞれ詳細ページにて。ENJOY!
posted by bangi at 01:38| Comment(0) | 編集部だより | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年01月06日

わたしのアセンション・2012を振り返る


あけましておめでとさん。

2012年はまーなんだかんだで充実した1年でした。Twitterにも書きましたがまー振り返ってみると、311には岡山で「いち@311」やりましたね。シューマン共鳴波を使ったバイノーラルビートによるオリジナル楽曲、それを3台のアンビエントサウンドカー(!)に分解して詩人、魔女、活動家がポエトリーリーティングをするサイレントパレード、献花式典にアフターパーティ、デュッセルドルフとシドニーで関連イベントと、なんとまぁアセンション趣味炸裂の大イベントだった訳ですが、別段社会にインパクトは与えてないようですね。HAHAHA.
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詳細リンク:「いち@311」公式ページ
オリジナル楽曲「Inori Eclipse 311」はこちら


4月には新訳「ほうのしょ」朗読会がありました。詳しくはこれとかこれとかご覧いただくとして、こちらにノイズとかミスとかを少し直して整えたMP3置いてますんで、お好きな向きはぜひダウンロードして普段聴きやリミックスなどしてみてくださいね。クリエイティブコモンズですからリミックスとか大歓迎。

詳細リンク:新訳・ほうのしょ


5月は現代美術作家・松岡友さんの個展「覚醒したまま夢をみる」(at 高円寺AMP Cafe)の催しとして、魔女っこるみたんこと谷崎榴美氏と一緒に公開儀式「ケルベロス召喚儀式 INVOKATIONOVKLVLTH」やりました。この儀式で何が行われたかは参加者の皆さん含め箝口令が敷いてあったんですけど、もうアセンションしたんで解禁でいいでしょうw

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松岡友個展「覚醒したまま夢をみる」現代魔術ワークショップ・ケルベロス召喚儀式

最初はオーディエンスの皆さんに現代魔術のあらましと理論の概説、それから実際に願望を魔術的な図形にデザインしてみるワークショップをして、そこでつくった皆さんのシジルを裸の僕の体に蛍光塗料で松岡友が全部描いたんですね。門番が扉を閉めて、独特のBunishing、銃によるBuptismで3人の司祭者の準備を整えた後は、真っ暗闇にストロボフラッシュと爆音ハーシュノイズ(ちなみにこれでした)のなか、谷崎の召喚文朗唱でおれがトランス状態に入り、冥府の番犬ケルベロスを召喚Invokeしました。この後はまー来てくれた人だけの秘密としておきますが、極めてエロティックな「シジルの活性化 Activation」が行われました。来てくれた人らそらびっくりしはったでしょうが、そのびっくり、「なんやこれ!」と一緒に、願望のシジルは潜在意識=冥府に焼き付けられたことでしょう。その後、願望達成の具合はいかがですか?

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ばびーん。めっちゃやる気やん。この後、驚愕のChaos Magic儀式が!

これで学んだのは至近距離でのストロボフラッシュはほんとに危ない、ということでした。あっというまにグルグルの魔術的トランス状態に入れますが、てんかんになる可能性があるので絶対まねしないでね。あとこの時の式次第は、2013年3月に東京リチュアルから刊行予定の電子書籍「禁式 - 現代魔術儀式・式次第集」に収録・公開される予定ですのでまーそういうのお好きなかたはお楽しみに。

詳細リンク:「覚醒したまま夢をみる」展示詳細


6月には「タロットワークブック あなたの運命を変える12の方法」(メアリー・グリーア著/鏡リュウジ監訳/現代タロット研究会訳/朝日新聞出版)が出ましたね。現タ研として装丁含め全面的にガンバった1冊ですが、3,000円もする割には結構まぁまぁいい感じにいってるようです。詳しくはamazonレビューとかをご参照いただくとして、この本の出版は、ここ数年このブログで書いてきたことややってきたことの一区切りみたいな感覚がありますね。

曰く、現代日本で最もラディカルなリーサルウェポンは想像力である。想像力は知らず内に奪われ、抑圧される。知らず内に奪われ、抑圧された想像力は、知らず内に奪回するべきである。一組のタロットデッキとの対話は、それを体感せしめ、実現せしめる。

故に、この方向でのタロット活用法を懇切丁寧に開示する優れた入門書を、もっとも「らしくない」インパクトで、書店の「占い/冠婚葬祭」あるいは「精神世界」コーナーに投入することが、クリエイティブディレクションの指針となる。とまぁそんなこと考えて装丁とかコピーライティングとかあれこれ頑張ったんですが、翻訳者として、オカルティストとして、クリエイティブディレクターとして、という3つの人格と脳の回路をフルに回して取り組んだ、自分にとっても記念碑的1冊です。さて仕上がりの程はいかがでしょうかね?



詳細リンク:
【タロットワークブック講座】タロットプロフィール&イヤーカードグラフを作成してみる
「タロットワークブック」について

同じ6月にはHIKARI CLINICの遠迫先生、漫画家長尾謙一郎さんと一緒にDommuneにも出させてもらいましたね。なんか上滑りしてたような気もしますが、まーそれなりに雰囲気ある話ができたんじゃないでしょうか。この時の記念につくった「陰謀年表」ここに置いときますね。



さて8月は「龍宮学校」で授業二コマやらせてもらいました。「時間憲法」と「実践明晰夢」ですね。これは楽しかったなー。島自体が夢の中みたいな場所で、「龍宮学校」自体がひとつのARG(拡張現実ゲーム、詳しくはたとえばこことか)の舞台で、現代美術家チームが制作する体験型作品でもある。個人的な2012ブライテストアワードはダントツで「龍宮学校」です。この人ら界隈の動向はチェックしておいたほうがいいですよ。

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「ひだりてをみておもいだす。わたしがゆめをみていることを」実践明晰夢講座より

詳細リンク:
ARG情報局「龍宮学校レポート」
時間憲法 Constitution of Time


そんで9月には「宇都宮石蔵秘宝祭」という美術イベントで「オペレッタ 化学の結婚 -薔薇と虹-」やって、10月ハロウィーンの夜に再録。

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これはオーソドックスな西洋儀式魔術の基本要素全部入り!みたいなやつで、西洋儀式魔術という趣味の入り口、入門編として使えるエチュード(練習曲)みたいな、それでいてキラキラしててカッコいいやつ!てのを創ってみたかったんです。あとこれはチームワークが最高でしたね。おれと谷崎さんが喧々囂々いいながら構成して、式文かいて、美術作家松岡友さんがキーになる稲荷面とかアート面を担当してくれて、全方位で最高クオリティを追求したBed Room Magicの記録、教材映像が完成しました。実弟おさむくんや、お腹痛いのに駆けつけてくれたSugarくんにも支えられてます。ほんまありがとう。

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会場ポスター

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バンギ=松岡タロットデッキ0番「愚者」

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松岡友制作:稲荷面

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「オペレッタ 化学の結婚」アルター

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「オペレッタ 化学の結婚」 High Priestess

詳細リンク:「オペレッタ 化学の結婚 -薔薇と虹-」全編ムービー


そんで12月には現タ研の2冊目「タロット バイブル 78枚の真の意味」(レイチェル・ポラック著/鏡リュウジ監訳/現代タロット研究会訳/朝日新聞出版)が出ました。これはほんとにいい本で、おかげさまで売れ行きも好調の様子。実際に手を動かす「タロットワークブック」とは対照的に、この本はなんていうか、ちょっと旅行にいく時に特急電車の中とかホテルで寝っころがって、少しづつ、いつまでも読んで欲しい本ですね。この本のプロモの一環で、1月24日発売の「HONKOWA」で、鏡さんと一緒に流水りんこ先生の「オカルト万華鏡 」に登場しますんで、そちらも楽しみです。キラーンて描いてくれてると思いますよキラーンて。



年末は現タ研主催「タロットビュッフェ」やりました。これも画期的なイベントでしたねー面白かった。制作をほぼ一手に仕切ってくれた谷崎榴美さんの流石の手腕で、めっちゃ豪華なメンバーで占い放題解放自治区を勃発させることができました。「ハピズム」にレビュー記事載ってますんでご参考に。これやってる方も妙な興奮がありまして、是非またやりたいなーと思っています。トークで参加してくれた堀江宗正さん、お忍びで遊びにきてくれた鏡さんも、おおきに。
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おおきに!

詳細リンク:
神田タロットビュッフェ・公式ページ
ハピズム「4500円で占い放題!タロットビュッフェにいってみた」



はてさてそんなわけで振り返ってみると、めっちゃ充実してるじゃないですか2012年。かつておれがこれほどまでに勢力的にアウトプットし続けたことってないですね。でもまー本来、これくらいやってなかったらあかんかったのかも知れません。もう微睡んでいられるようなご時世でもありませんからね。というわけで2013年早々、さっそくですが新しいプロジェクトもいくつか進めています。さっきからちらほらでてる「東京リチュアル」もその一つですが、これについてはまた改めて、2013年の展望と抱負とあわせて書きましょう。もう長くなったのでね。

ではみなさん、今年もなにかとおもしろく!

参考リンク:
東京リチュアル
占いと魔法と冠婚葬祭プロデュース。スカイプ鑑定もきまぐれオンライン中! Twitter

現代タロット研究会
翻訳出版、ワークショップもきまぐれ開催中!Twitter

バンギ・アブドゥルのもろもろアカウント:
Twitter(本人)
Twitter(Bot)
SoundCloud
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2012年11月16日

レクチャー告知:「タロットワークブック」講座、12月8/9日 入門編&中級編(大阪)

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「タロットワークブック」講座、最新日程がでました。(両日とも大阪です)

12/8(土)入門編
■基礎知識篇:
タロット概論
■やってみて覚える・魔術的想像力と体術
4元素のイマジネーション/エレメントの浄化儀式
■スリーカードスプレッド
スプレッド実践&グループディスカッション
■愚者の旅

↑こちらは前回講座とほぼ同内容です。前回はこの日初めてタロットを買ってきて、会場で封を切ったという方もいらっしゃいました。そんな完全ビギナーの方でも楽しんで頂ける内容となっています。

そして今回、中級編を1日追加しました。

12/9(土)中級編
☆中級編
■コートカード検証/カードと数秘術
コートカード・パーティ、数秘術解説
■リーディング・エクササイズ:タロットのためのカバラ
四元素/七惑星/十二宮と生命の樹
■タロットを使って計画を立てる
ファイブ・イヤー・ファンタジー・スプレッド(またはお金と繁栄のマンダラ)
■応用編(その他、時間とご希望に応じて)
ペンデュラムの活用
インナーティーチャー/タロットヘルパーとのコンタクト
タロットを使って、気分の落ち込みに対処する
人間関係を明確にする

↑こちらはコートカードや「ワークブック」収録の様々なスプレッドを考察していく実践的な内容で構成します。特にワークブックには収録されていないオリジナル講義「タロティストのための必要充分カバラ」は、カバラとか生命の樹とかあるけどなーんかぴーんとこないんだよなーて方におススメです。でっかい「生命の樹」を持っていってレクチャーする予定。

問い合わせ、申し込みは以下リンクからどぞ。
http://ameblo.jp/s-lightyourfire/entry-11397881903.html




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2012年10月09日

【イベント告知】『タロットワークブック あなたの運命を変える12の方法』の翻訳者による あなたの人生に魔法(マジック)をもたらすタロット活用法、1日入門講座!

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来る10/28日、現代タロット研究会(現タ研)の江口聖子さんと一緒に、大阪にて『タロットワークブック』収録の各種エクセサイズの実践ワークショップを開催します。
本を読むだけではつかみきれない部分も、実際にみんなでやってみることですんなり「なるほど!」と理解できるでしょう。また二人以上で行うエクセサイズを同好のタロティストたちとワイワイ楽しめる素敵な機会。
奮ってご参加ください。(参加申し込みは下記参照)

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
『タロットワークブック あなたの運命を変える12の方法』の翻訳者による
あなたの人生に魔法(マジック)をもたらすタロット活用法、1日入門講座!

『タロットワークブック』(朝日新聞出版刊)の翻訳チーム、現代タロット研究会のバンギ・アブドゥル氏を講師に迎えての、タロット1日講座を開催します!

本講座は、「1日でタロット占いができるようになる」といったような、占いの手法を学ぶことが目的のタロット講座とは、少し様相を異にします。

ここでは、自分自身としっかり向き合い、自己を発見し、人生の舵取りが容易になるよう、どのようにタロットを活用するのかを学びます。
勿論、その結果として、ある程度自分自身、あるいはお友達のためのリーディングもできるようにはなるでしょう。

『タロットワークブック』の前書きで、鏡リュウジ氏は、
「タロットは、―(略)―それ自体は印刷された1組の紙にすぎない。工場で大量に印刷、生産され、世界中のマーケットに流通していく商品であるという意味では、ほかのプロダクトとなんの変わりもない。」
「しかし、たしかにタロットはあなたの人生に大きな変化を、そう、少しばかり大げさにいえば「奇跡」を起こすこともあるのだ。」
と述べています。

「タロットは、単なる占いの道具ではなく、未来の運命をも変える力を持った魔法の道具である…」
単なる印刷物であるタロット・カードに、本当に人生を変容させるような力が潜んでいるのか?
それは、あなた自身で体験してみてください!

講座では、基本的に『タロットワークブック』を教科書として進めますが、勿論バンギ氏より、本書と関連する近現代西洋魔術/魔法(マジック)についてのレクチャーも要所要所で織り込まれる予定です。

入門編ですので、殆どカードに触れたことのない初心者の方からご参加いただけます。


【日 時】10月28日 日曜日 10時〜16時
【場 所】エル・おおさか 6階 会議室608
     http://www.l-osaka.or.jp/pages/access.html
     京阪・地下鉄「天満橋駅」または「北浜駅」より、約徒歩8分

【参加費】11,000円(事前にお振込みをお願い致します。口座情報は、お申し込みいただいた際、お知らせします。)

【持ち物】ライダー版タロットデッキ、筆記用具
     もしお持ちの場合は『タロットワークブック』
     ※ワークシートはこちらで用意致します。ご自身の本に書き込む必要はありません。

【定員】 15名(最少催行人数5名)
     ※最少催行人数に満たない場合は日時変更の可能性あり。

****************************************
【お問い合わせ お申し込み】
Tel: 080-1509-1160
Email: reconnection-lightyourfire@live.jp 
担当: Twentythree Japan 江口
****************************************

【講座内容】
■基礎知識篇:
タロットの構成と全体像
■やってみて覚える・魔術的想像力と体術
アクティブイマジネーション/エレメントの浄化儀式/カードの中に入る
■語り合って理解する・プロフィール解釈
タロット・プロフィール解釈
イヤーカードグラフ解釈
■応用編・タロットワークブックが伝えるもの
スリーカード・スプレッド実践&グループディスカッション
アファメーション作成/魔術的TIPS
インナーティーチャー/タロットヘルパーとのコンタクト
タロットを使って、気分の落ち込みに対処する

その他、
ケルティック・クロス
ファイブイヤー・ファンタジー
お金と繁栄のマンダラ
チャクラ・スプレッド
生命の樹スプレッド
ペンデュラムの活用

など「タロットワークブック」収録のエクセサイズから、当日のグループセッションの流れによって、皆さんが実践してみたいもの、皆さんに必要と思われるものをインタラクティブに選択し、実践していきます。


【メイン講師】バンギ・アブドゥル Bangi V. Abdul
現代西洋魔術研究/翻訳/タロットリーダー
クロウリー、ケイオス、サイケデリックス、アート、ポップカルチャーを横断し「いまここのMagick」を探求。翻訳に「タロットワークブック」(メアリー・K・グリーア著/鏡リュウジ監訳/現代タロット研究会翻訳/朝日新聞出版刊)「ほうのしょ」(アレイスター・クロウリー著)他。現代儀式芸術ユニット「東京リチュアル」戯曲儀式「オペレッタ・化学の結婚」上演(2012)。
http://23youbi.seesaa.net/
http://twitter.com/bangi23

【アシスタント講師】江口聖子
翻訳/ヒーリング・プラクティショナー/タロットリーダー
日本文学/思想を専攻後、豪州・英国にて西洋哲学やキリスト教、オカルティズムにも触れる。
翻訳に「タロットワークブック」(朝日新聞出版刊)、また雑誌「スター・ピープル」(ナチュラルスピリット刊)にて、セドナのミスティカル数秘術師ノボ・カリプソの翻訳記事を連載中。


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2012年08月08日

【タロットワークブック講座】タロットプロフィール&イヤーカードグラフを作成してみる

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メアリー・K・グリーア著/鏡リュウジ監訳「タロットワークブック あなたの運命を変える12の方法」7月の発売以来各方面からご好評いただけているようで、訳者の一人として大変にありがたく喜ばしい次第である。ありがとうございます。

(こちらもご参考あれ:過去ログ「「タロットワークブック あなたの運命を変える12の方法」メアリーKグリーア著/鏡リュウジ監訳/現代タロット研究会訳」

さてそんな本書のオモシロどころはなんといっても「タロットプロフィール」の作成だろう。数秘術的・占星術的照応から、自身の生年月日に応じた様々なキーカードを割り出していく訳だが、これははじめてタロットを手にとった人でもすんなり深く楽しめる、とてもキャッチーな技法である。

また、こうして得られたタロットプロフィールからは、続く「イヤーカードグラフ」の作成でさらなる妙味が引き出される。手順は極めて簡単なのだが、ずらずらっと並ぶナンバーチャートと空欄グラフ用紙にやや尻込みする、という声がちらほらあったので、以下に実際にやってみて手順を紹介する。カンタン楽しく深みのあるエクセサイズであることがお判りいただければ幸いだ。



■■■パーソナリティカードとソウルカード

おれは1973年3月26日生まれ。足すと2002で、一桁になるまで足すと4となる。
すなわちおれのパーソナリティカードは4、「皇帝」である。
4桁からいきなり一桁になったので、ソウルカードも同じく4、「皇帝」となる。
ちなみに3/26は牡羊座、「皇帝」のカードの占星術上の対応も牡羊座である。(『ツァダイは星にあらず』はとりあえず無視ね)すっげー皇帝。濃い皇帝。

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短気で飽きっぽい理想家。暫定的で圧倒的な支配権をふるい、仕事が片付く前に飽きる。ええもうそのとおりでございます。本書附録Aの「カードの解釈」で「皇帝」を引くと、【アファメーション】の項に

「私は最も高い望みを達成する力と克己心を持っています」

とある。いやーそうだといいよねほんと。けどおいらもうくたびれちゃったよ。



■■■ヒドゥン・ファクター・カード

とまーこんな序盤でくたびれててもアレなので、サクサクとP26の表からパーソナリティ/ソウルカードともに4となる欄を引き、ヒドゥンファクターカード(隠れた要素、影のカード)を得る。どれどれえーと13「死」と22「愚者」ね。

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ここまでの3枚が、自分の意識的・無意識的な人格を統合して表す「タロットの星座」となる。しばし瞑想。むーん

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■イヤーカード
さて、イヤーカードいきますよ。まずは今年2012年のイヤーカードを算出してみる。

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7「戦車」ね。一見派手そうだが質実剛健、慎重に一歩一歩進む感じね。まーそうかもね。
今年は家に籠ってることが多かったし、仕事上では新分野開拓に明け暮れた。また家族が入院したりしたこともあり、人生史上初の勢いで「家族」と関わった1年だ。これはなるほど「戦車」のイメージにしっくりくる。



■■■その他のカードを算出し、タロットプロフィール完成!

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ほいほいほい、と書き込んでいって、タロットプロフィールが完成!
ちなみにタロットをメモに記す時には、例えば「ワンドの2」なら「2/W」、「ペンタクルのクイーン」なら「Q/P」とか略記するのが便利。自分にわかればいいわけで。



■■■イヤーカードグラフ

さてびよーんと間をすっとばして「イヤーカードグラフ」をつくってみる。
P61の表から、先ほど生年月日から算出した「1973年3月26日=2002」のカード4をみつけ、そこから一連の連なりを次ページの空白チャートに点を打っていく訳だが、最初に「年齢/0才」のところに生まれた年73と書き込み、そこからずらずらずらーと西暦を埋めておこう。おれはなんとなく75才以上まで生きる気がしないので、切りのいいところで西暦2050年まで埋めてみた。

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で、0才の時には「4」、そこから表に従って毎年のイヤーカードの印を打っていき、分かり易いように直線で結んだ上で、ぐわーと過去を思い出していろんな人生上のタイミングを書き込んでみる。特に思い出すトピックがなくても、直線の始点と終点の年を思い返してみると「なるほどねー」という出来事がスポスポ当て嵌まっていくのではないだろうか。

■73年「皇帝」で誕生したおれは、80年「欲望」で終る最初の10年周期の節目に、大阪から名古屋に転居。

■再び「欲望」が現れる89年から次の10年周期開始にあたっては、ドロップアウトした高校を通信制に切り替え、老人病院リハビリ室に就職。これが人生初の職業だ。生命力を持て余し生き急いでいたこの頃の雰囲気はなるほど「欲望」ですかそうですか。

■さらに次の10年周期の開始の年01年(カード:司祭)には人生初の海外旅行で中央アフリカ・ザンビアへ。中古ベンツでの中央アフリカ放浪、日蝕&トランスパーティの洗礼を受けた。街での試みに一区切りをつけ、太陽と月が重なる一点を目指して地球の表面をぐるっと移動してみたこの経験は、現在のスピリチュアリティ探求(司祭)の方向性を決定づけたものだ。

■次の10年周期開始、つまり2011年(カード:恋人)は広告代理店を退職。震災をきっかけに「散都」のイメージに導かれて岡山移住を決めたのだが、前回93年に「恋人」が現れた時も、このまま病院で看護士を目指すか、全く別の人生を模索するか、二つに一つの決断を迫られたタイミングであった。「恋人」とはまさにそのような決断、二者択一を象徴するカード。



やるじゃんメアリー。総じて、グラフに現れた10年周期の終了/開始は「移動/旅」で彩られている。他にも要所要所でのイベントが、同じカードの年に共鳴するように起きていたりして、感慨深い。

■最初の自分の会社を設立した年と、二つ目の会社を設立した年は、ともに「隠者」のカードの年。

■現在の妻と同棲を開始した年と、正式に結婚した年はともに「死」のカードの年。「死」はおれのヒドゥンファクターカードでもある。

■はじめて「業(ART)」が現れる10年は、初の広告賞受賞作品を制作していた最中。(受賞は翌年度)

へー面白いねーいやーなんなんだろうね人生て。いやはや。とまー一通りグラフを作ってみるとこんな感じに過去の人生史に象徴的なレイヤーを透かしてみる面白さを味わえるのだが、このグラフのオモシロは過去方向だけで味わうものでは勿論ない。



■■■未来はどうなるの?

グラフは未来方向に、自分の気の済む先までタロットを当てはめていくことができる。過去の出来事とそこに現れているカードを手掛かりに、今後の人生にどのようなタイミングがあり得るのかを予測できる訳ですね。予測ていうか、なんか今後の行動に「あ、次にあのカードが出るの○○年か」という風に、行動のガイドリズムにする、てイメージかな。

例えばおれの場合、どうも「死」が現れる年が重要な節目となっているようなので、今後「死」が現れる年を貫く横線を引いてみた。すると18年、27年、36年、45年が「死」の年になることが一目瞭然となる。最後の「死」の年に死ねば享年72才、タロット72枚の旅が切りよく終る訳だが(※1)、先述のとおり、なんとなく75才くらいじゃね?と思っているのでその年、48年をみるとカードは「塔」。うん、これも確かに死にそうだ。

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しかし、ここまでの人生でまだ登場していない、つまり体験していないカードが幾つかある。77才まで生きれば、この人生ではじめて「月」のカードが現れるのだ。せっかくだから「月」も体験してみたいので、おれは自分の寿命イメージを2年延長し、「月」がもたらす「魂の暗い夜」「黄泉の旅路」の体験をもって人生の晩年を飾ろうではないか、と心がけるようにした。

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■■■イヤーカードグラフの意義

こうして人生の過去と未来にタロットの象徴性をマッピングしていくことは、単に占い的な楽しみにとどまらない意義を持っている。タロット1枚1枚の象徴性は、究極のところ個別のカードとの1対1の瞑想によって関係性(ラポール)を築いていく他ないのだが、イヤーカードグラフを作ってみることで、実際の人生での体験とカードが結びつき、瞑想の「お題かつ解答」として、ぽんと目の前に提示される訳だ。それは、自分にとって「皇帝」が、「司祭」が、「恋人」が「死」が、どのような意義を持っているのか、どんなメッセージを含んでいるのかを、自身の人生をガイドブックとして探求することに等しい。イヤーカードグラフをつくり、人生のイベントを書き込み、初恋の甘美や別離の痛みを再体験しながらカードのメッセージを読み取ろうとするプロセスは、そのまま非常に強力なタロット瞑想であると言えるだろう。

グリーア女史のタロット文化への貢献の最たるもののひとつが、このメソッドであるとおれは思う。78枚全部、瞑想してパスワークして、マスターしていきたいですよそりゃ。けどさー1日1枚とか、1枚1週間とか、そういうカリキュラムを自分に課してやるのって大変じゃん。やってらんないって。忙しいし。そこで「ほら、あんたの人生に大アルカナをマッピングしてみれ。あんたの体験とカードの関係、興味あるっしょ?」という導入は、教育法として極めてエレガントで強力だ。一枚一枚のカードを、自分ごととして、体験として、知らずのうちに内化していく。この大アルカナマスター法を思いついた時の、希代のタロット教師グリーア女史のにんまり笑顔は想像に難くない。

グリーア女史は、伝統やオカルティックな秘密教義よりも、まずリーダー(読者)自身のひらめきと、その人生のシンクロニシティを信頼し、委ねる。タロットについて、難しいことなんか何も知らなくていい、ただ人とカードが出会えば、そこには意味のある語らいが必然的に生まれるのだ、そのピュアな出会いこそが重要なのだ、という信念が本書を通底しているように思える。

興味を持たれた方は是非、ご自身のイヤーカードグラフをつくって見て欲しい。そこで得られた何らかの発見や、新たに生まれた謎など、ツイッターなどでシェアしていただければこれまた幸いの極みである。本書の他のエクセサイズについても、ご質問やご要望などがあればこのブログで実技解説の機会を持つ所存である。

※1
(9/4付記)「タロット78枚の旅」の誤記である。タロット72枚の旅?何書いてんだおれ、と思ったらソロモン72柱の悪魔ですねそれ。GD体系ではホロスコープの10度区分(decan)にエースを除く小アルカナ2-10の36枚を対応させ、そこに2柱ずつ悪魔を配置している。つまりタロット72枚の旅とは1年間昼と夜のGoetic Travelとなる訳だ。やだなーw
「タロット78枚の旅」の完遂を目指すならおれの寿命イメージも当然78才まで延長するべきだろう。翌年をみるとなんと!新たな10年周期の開始にあたり「運命の輪」が! というわけでボーナス10年を追加し、おれの寿命イメージは10年周期の最後87才まで延長されたのであった。そこには「太陽」が。うん、死にそうだ。




posted by bangi at 05:09| Comment(2) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする